荻窪I氏道場

荻窪I氏道場は、剣友であったI氏が、自社倉庫の中に作った道場である。

私が、I氏から「剣道場を作ってくれ。」と依頼を受けたのは、まだ、公立中学校教員として勤務していた時代であった。公務員は副職を禁止されているから、剣道場建築工事を仕事として行うことはできない。

どうしようか迷ったが、私の手元の大工さんを、I氏の経営するマンションへ住み込ませて、剣道場工事をすることで、工事管理ができる見通しがついた。

しかし、大工さんは建築工事の専門家であっても、剣道場作りの専門家ではない。

私は、毎日、仕事を済ませてから、車を飛ばして東京へ通って、大工さんと打ち合わせをして、次の日の段取りを組み、深夜、家に帰る毎日だった。

昼間の仕事をしっかり行って、夜もひと働き。それも、車で往復3,4時間の移動をすり事は、大変なことだったが、I氏が私を信頼し、金に糸目をつけず、思い通りの剣道場を作ってくれるという仕事冥利に、楽しみながら最後までやり通すことができた。

この剣道場は、外装、内装、建具等、充分細工を凝らし、世界に誇れる剣道場となって完成した。私の作る剣道場は、床が独特だ。この独特の剣道場床を、初めて工事したのが、この剣道場であった。私の人生の、節目の剣道場でもある。